昔読んだ本を、歳月を経て再び読むことがあります。
手元に置いてある本はよく読み返しますが
(手元に置いてあるということは、読み返すだろうと思っているという前提で、
それは私の中でとても好きで感銘を受けている本だということです)
手放した本を、もう一度手に入れて読むことも時折あります。
今回は二十代に出会った、向田邦子さんのエッセイを手に取りましたが、
「べスト・エッセイ」ということで、向田邦子さんの妹、和子さんが
選んで編んだものでした。
私が読んだエッセイ集は数点なので、「ベスト」となると初めて読む
エッセイがほとんどでした。
読み始めて感じたのは、二十代の頃の感じ方と変わっていると言うこと。
あの時、どのように感じていたかをザクっと表すと、
「大人の女性の洗練された文章だけど、経験は他の誰とも違うもので、
向田邦子さんにしか表せない言葉」
ということですが、あれから私も年齢を重ねて、それなりに色々な
経験を経て、
“大人の女性”なんて簡単には言えなくて、悩んで、苦しんで楽しんで、
喜んで怒って、と、一人の女性が感じたことをありのままに平明な言葉で
表していて、飾り気のない美しさがそこにあり、ただ、変わらないのは
向田邦子さんにしか表せないものだと感じました。
向田邦子さんは、1981年飛行機事故によって52歳で亡くなられました。
私もあと数年でその年齢になるくらい生きてきて、
目線が近くなってきたということでしょうか。
ただ、見ている事象は全く違くて、感じ方も違うけれど
私は私で色々感じて来たということが、
感じる心に幅を持たせているのかも知れません。
そう考えると歳をとるのも面白いことです。
最後の「手袋をさがす」という一編が胸を打ちました。
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