ラベル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2023/07/31

はるきすと

 


























以前勤めていた陶芸教室の初期の頃の生徒さんで、

割と年齢も近い女性がいて、陶芸をしながら少しずつ個人的な、

好きなものとか、こととかお話しするようになり、好きな本の作家の

ことについてお話しすることがあった。



その女性は、村上春樹さんがとても好きで、その頃少しだけ

かじったことのあった私が反応すると、その当時出版されていた小説、

彼女が所蔵しているものを(全てハードカバーで)家に送ってくれて、

お貸しくださったのです。



それから時間をかけてじっくりと春樹さんの世界に入り、

特別な時間を過ごしました。



その後、彼女は教室を辞め、今では連絡も取っていないけれど

村上春樹さんの小説が出版される毎に想い出す。


最新の小説を、また時間をかけて読んでいる。


私の中では、その本を教えてくれた人達と共に読んでいるようで、

それは私にしか無い読書体験をしているように感じる。



ハルキストにはなりきれないけれど、村上春樹さんの世界もまた、

私の世界の一部であると言えるくらい入り込んで浸る小説です。





2023/02/28

てんろ


 




沢木耕太郎さんの新刊「天路の旅人」


9年振りの長編ノンフィクション

先日本屋さんにふらりと立ち寄った時に目にして即買いました。


その後、新聞の記事で那覇のジュンク堂書店にて

トーク&サイン会をするということを目にして、行きたい気持ちを

募らせてはいたのですが、その日は吟行の日で、急いで行っても

開始時間には遅れてしまうのでどうしようかと悶々しておりました。


しかし、読み進めていくと今回の主役の西川一三氏の娘さんの

お名前の文字が私と同じだったので、これは行くべきだ!

と私の中の由起が言ったので、決心しました。(それだけの理由!?)

「ゆき」という名前はありふれていますが、「き」を「起」とする人は

あまりいないのです。よく「紀」と間違われるくらい、そちらの字を

持つ人の方が圧倒的に多いのです。















そんなこんなで急いで駆けつけ、1時間以上に及ぶ貴重なお話を

聴くことができました。

「深夜特急」の装丁のことから、新刊の掛かれるいきさつなど、

沢木さんの生声で聴くことができたのも嬉しかったです。

「深夜特急」を読んで、仕事や学校を辞めて旅へ出て行った人が続出して、

学校の図書室に置かないでくださいと言われたりといったエピソードや、

トーク後の質問タイムでは、まさにその影響を受けた人が東京から

日帰りで沢木さんに会いに来て、お礼を伝えたかったと、質問でない

ことを伝えたりと、その影響の大きさに改めてしみじみしていました。





















サイン会も盛況で、かなり並びましたが私の番がやってきました。

今回のサイン会では、書いていただく側の名前の記入は無しで、と

書店員の方からアナウンスがあったので、そのつもりはなかったのですが、

つい、「西川さんのお嬢さんのお名前と同じ字なのです」と言ってしまい、

沢木さんは

「それは珍しいですね」

とお答えくださいました。


そうしたら、ローマ字ではありますが名前も書いてくださいました。テヘ。






















本はまだ読み途中。

旅はまだまだ続きます・・・






2023/02/20

よきとき

 








本屋さんにぶらりと立ち寄るのが好き。


なんの情報もなく訪れた時に、好きな作家の新刊があったりすると

嬉しくなって、すぐに買ってしまう。


衣類を買うのにはとても躊躇するけれど(値段も違うからね)

昔から本を買うのはあまり悩まない。


宮本輝さんの新刊「よき時を思う」


読み出したら止まることなく、一気に読める面白さ。


読書をしていて思うのは、知らない言葉や世界を知ることができる

その体験の嬉しさ。



今回の小説の中で知ったことが「四合院造り」という言葉。

建築関係の方は知っているかも知れないけど、

中国の伝統住宅の様式のことで、四つの辺に建物を置き、

中央に庭園を造るもので、北京の四合院が代表的だそう。

でも、北京オリンピックの時にの開発によって、多くが取り壊されて

しまったようです。

どこの国でも同じようなことが起きているのですね。


「よき時」とは、過去にあった「よかった時」ではなく、

未来の「よき時」ということで、希望のある内容でした。


同じ言語を紡いで作られる小説やノンフィクションなどの本でも、

自分の好みに沿う作家とそうでない人がいて、どうも読みづらかったり、

内容が心に響いてこなかったりとあるけれど、それは人それぞれで

よいのであって、私は好きだけどそうでない人もいて、私はそうでもなくても

大好きな人もいて

みんな違ってみんないい(みすゞ)


それぞれの、よき本との出会いがあることを想う。



2022/08/07

しゅっぱん

 





友人で、夫婦円満コンシェルジュのやっちゃんの本が出版されました!


甘え下手な妻 不器用な夫


ずっと、出版することを目標に努力している姿を見ていたので、

手に取った時は嬉しくて、感激しました。


表紙の写真はやっちゃんと旦那様。

素敵な背中~。やっちゃんも可愛い!


本になって書店に並ぶなんてすごいなーー!!


まだ読んでいる途中ですが、内容も読み易くて面白く、

すんなりと入ってきます。


以前講座を受講した時のことが蘇ってきて、感謝の気持ちが湧いています。


気になった方は是非、読んでみてください!



2022/04/26

あとがき

 






宮本輝さんの著書 「にぎやかな天地」のあとがきより


『私たちは肉眼では見えないものに取り囲まれて生きている。

遠い宇宙のことも見えないが、わずか一ミリ四方でうごめく微生物たちも見えない。

そして、それらだけでなく、物事の生起と、変化のさまと、その変化によって

得られる未来もまた、私たちには不可視な領分として果てしなく続く。

大きな厄災が起こったとする。その時の悲嘆、絶望、憤怒、慟哭というものは

未来を断ち切ってしまうかに思われる。

だが、その大きな悲しみが、五年後、十年後、二十年後に、思いもよらない

幸福や人間的成長や福徳へと転換されていったとき、私たちは過去の不幸の意味について

改めて深く思いを傾けるであろう。

冷静な視力で過ぎ去った長い時間を見るならば、不幸が不幸のままで終わった

というようなことは少ないのだ。


~中略~


肉眼では見えないものの存在を信じ、時間と言うものの持つ力を信じなければ

昔ながらの伝統と技法を守って味噌や醤油や酒や酢や鰹節を造り続けることはできない。

化学の発達によって、さまざまな発酵菌は身近になったが、時間だけは短縮できないのだ。

発酵食品に限っても、いいものを造るためには時間がかかる。

それなのに、私たちは、失敗や挫折や厄災からあまりにも早急に抜け出そうとして

心を病んでいく。』





何度読み返しても毎回新しい気づきがある

宮本輝さんの著書。



このお話は日本の伝統的な発酵食品をテーマの中心として進んでいきます。


この本は2008年に刊行されているけれど、今の状況のことを反映して

語られているようなあとがきを読んで、また深く感じ入ったものです。




時間を短縮することばかりに囚われているやり方に、

そろそろ辟易してきました。


2022/01/24

てぶくろ

 

























昔読んだ本を、歳月を経て再び読むことがあります。



手元に置いてある本はよく読み返しますが

(手元に置いてあるということは、読み返すだろうと思っているという前提で、

それは私の中でとても好きで感銘を受けている本だということです)

手放した本を、もう一度手に入れて読むことも時折あります。




今回は二十代に出会った、向田邦子さんのエッセイを手に取りましたが、

「べスト・エッセイ」ということで、向田邦子さんの妹、和子さんが

選んで編んだものでした。



私が読んだエッセイ集は数点なので、「ベスト」となると初めて読む

エッセイがほとんどでした。



読み始めて感じたのは、二十代の頃の感じ方と変わっていると言うこと。

あの時、どのように感じていたかをザクっと表すと、


「大人の女性の洗練された文章だけど、経験は他の誰とも違うもので、

向田邦子さんにしか表せない言葉」


ということですが、あれから私も年齢を重ねて、それなりに色々な

経験を経て、


 “大人の女性”なんて簡単には言えなくて、悩んで、苦しんで楽しんで、

喜んで怒って、と、一人の女性が感じたことをありのままに平明な言葉で

表していて、飾り気のない美しさがそこにあり、ただ、変わらないのは

向田邦子さんにしか表せないものだと感じました。



向田邦子さんは、1981年飛行機事故によって52歳で亡くなられました。



私もあと数年でその年齢になるくらい生きてきて、

目線が近くなってきたということでしょうか。


ただ、見ている事象は全く違くて、感じ方も違うけれど

私は私で色々感じて来たということが、

感じる心に幅を持たせているのかも知れません。



そう考えると歳をとるのも面白いことです。



最後の「手袋をさがす」という一編が胸を打ちました。



2021/12/16

こうねん

 





「三十光年の星たち」 宮本輝 著



新しいものをどんどん取り入れて、どんどん知識を広げていくのもありだけど、

私は何度も何度も同じものを確かめて、深く深く分け入っていくのも好き。



宮本輝さんの小説は、何度も何度も読んでも感動するし、飽きない。

他にはない読書体験です。



彼女にも逃げられ、親からも勘当された無職の30歳の青年が主人公。

借金をしている老人のもとで運転手として働き始めて、

様々な人との出会いと学びを得ていく。


佐伯という老人の言葉を借りると

「十年で、やっと階段の前に立てるんだ。二十年でその階段の

三分の一のところまでのぼれる。三十年で階段をのぼり切る。

そして、いいか、のぼり切ったところから、お前の人生の本当の

勝負が始まるんだ。その本当の勝負のための、これからの三十年なんだ。」



30歳だったら60歳ではないか。

そこからが勝負だなんて。


でも、人間が練られていくにはそれだけの月日がかかるということも確かだ。

一つのことに三十年打ち込むことが出来たら、人は何かを見つけることが

出来る気がする。


もう一つ、佐伯が「自分を磨く方法」として語ったこと。


「働いて働いて働き抜くんだ。これ以上は働けないってところまでだ。

もうひとつある。自分にものを教えてくれる人に、叱られつづけるんだ。

叱られて、叱られて、叱られて、これ以上叱られたら、自分はどうにかなって

しまうってくらい叱られつづけるんだ。このどっちかだ」




今の時代に聞いたら「ブラック企業」「パワハラ」なんて言われそうだけれど、

「修行」

ということは、正にそういうことだろうと思う。

ただ、そこには人に対する愛情が無ければならないけど。



叱られたらすぐに投げ出してしまう人がいるのは、今も昔も

変わらないけれど、投げ出しそうになった時に、話を聞いたり、

励ましたりする人が周りにいなくなってしまったのが現代だと思う。



自分が励ましたり出来る人間であれたらいいけれど、せめて

話しをいつでも聞くよ、と伝えたい。



この本を読んだのは2回目。

また何度も何度も読むでしょう。



2021/07/10

すもう

 










名古屋場所開催中の大相撲。

休場が続いていた横綱白鵬が復帰で、初日から6連勝しています。



と、そんな中お借りしたこの本。


「世界のおすもうさん」


子供の相撲から、女子相撲から、沖縄角力、モンゴルのブフ

韓国のシルムなど、世界の相撲を取材してまとめられています。

とっても面白く、感動した!!














大相撲だけが相撲ではない。

今も世界のどこかで相撲がとられている。


道具を使わず、身体一つでぶつかり合って勝負する。


この今の状況で、毎年白鵬関が開催している

世界青少年相撲大会  白鵬杯」は今年は中止となったようだけど、

またいつの日か世界の少年たちが日本に集まって、身体を合わせて

汗を流して相撲できる日が来るといいな。

白鵬は「将来は女子選手も白鵬杯に参加してほしい」と考えているらしい。

そんな時も楽しみですね。



はっきよい!



2021/05/24

はっこう

 





またよき本に出会えた。


宮本輝さんの「にぎやかな天地」



世の中に、豪華限定本というジャンルがあることもあまり知らなかった。

表紙に鹿皮を使ったり、紙の上質なものを選び、写真も美しく、

活字も内容に合ったものを使い、本を包む箱もこだわる。


印刷部数は少ないけれど、一冊何万円もするような、出版したいと

依頼する人の想いのこもった本。


そんな本作りを年に2、3冊依頼してくる、一人の老人から受ける仕事をして

生計を立てている船木聖司という青年を主人公とした物語で、

その老人から「熟鮓(なれずし)、醤油、鰹節といった日本の伝統的な

発酵食品を後世に残す豪華限定本を作ってほしい」

という依頼によって、日本の各地を訪れて職人たちを取材したり、

現場を見て写真に収めたりしていくなかで、微生物の精妙な営みに

心を惹かれていき、自分の人生や出会った人々との交流にも、

まるで発酵していくような目に見えない働きがあることを感じて行くのです。



発酵食品は、ファストフードとは違い、長い時間をかけて微生物が働いて、

もとのものとはまったく違った風味や栄養や食感などを作っていくものであって、

時間という要素がとても大切になってくる。

経済が発展していく中で、大量生産大量消費ということが当たり前になっているけれど、

そこには、微生物の働きではなく、科学的に時間を短縮して作られているような

ものがある。

味噌や醤油、酢などの調味料も、きちんと選ばないとそういった偽物を摂取することに

なってしまう。そこには健康のために働いてくれる力は無いのです。



「発酵食品」ということを軸として、人間に起こる様々な現象も、

その時はとても不幸なことに見えても、5年後、10年後、20年後に

思いもよらない幸福や人間的成長や福徳へと転換されていくことがある、

その時間だけは短縮できないと、小説の中で伝えています。


宮本輝さんのあとがきから

「いいものを造るためには時間がかかる。

それなのに私たちは、

失敗や挫折や災厄からあまりにも早急に抜け出そうとして心を病んでいく」



災厄の中にいる時はとても苦しい。

でも、じっと耐えつつ一歩一歩小さな歩幅でも、時間をかけて

先に見える小さな灯りのところまで歩いて行くような、強い心を手に入れよう。






2021/03/27

にねんごの

 



丁度二年前に読んだ

宮本輝さんの「田園発 港行き自転車」


富山と京都と東京を舞台にした小説ですが、

先日富山を訪れて、もう一度読みたいと思いました。


まだ上巻の途中ですが、先日訪れた富山の地名が出てきたり、

また楽しめます。


内容をほとんど忘れているっていうこともあり(笑)



でもちょっと、2年前と感じ方が変わっているような気がして、

本を読み返すのも面白いなって思います。


富山の風景など、描き方がとても素敵で、また旅したくなるのです。





2020/12/19

とうだい





 

宮本輝さんの「灯台からの響き」を読み、この年の瀬に、

心が遠くの海まで旅をしたように思いました。


はぁ~、出会いというのはなにものにも代えがたいものです。

小説の内容に触れる前に、「宮本輝」という作家に出会わせてくれた

陶芸教室の生徒さんに感謝します。


文章を読んでいて、行間に果てしない景色が、心情が広がるような瞬間が

積み重なっていく読書体験って、なかなかないですよ。

ただ読んでいるだけで涙が出てくるのです。(歳のせい!?)


いやしかし、本当にそうなんだもの。

何度も何度も頁から目を上げて、自分の人生を見つめるって、すごいこと。



そんな読書体験が、みなさまにもありますように。




主人公の牧野康平は、父から受け継いだ中華そばやを

妻の蘭子とともに長年営んで、3人の子供も立派に育て上げていた。

そんなある日、突然蘭子は心筋梗塞で亡くなってしまい、

蘭子との息の合った共同作業でしか「まきの」の中華そばは作れないと、

その後2年近く店を閉めてぼんやりと過ごしていた。

ある日、読みかけの本を読んでいると、昔、蘭子に送られてきた

見知らぬ人からのハガキが本の頁からハラリと落ちて来た。

小坂真砂雄という大学生が、灯台巡りをしたという内容で、

ハガキの下半分には細いペンでどこかの岬らしいジグザグの線が描かれていた。

その時蘭子は、「こんな人は全く知らない。なぜ自分宛に送られて

きたか分からない」と言って、差出人の住所にそのように描いた手紙を

送ったのだ。




その30年ほど前に送られてきた古いハガキを見つけることによって、

このままでは引き籠りになりそうだった62歳の康平が、

人生を再出発するために灯台を巡る旅に出かけます。

近しいと思っていた妻に、自分の知らない、

人生の中での出来事が存在することを知っていく過程で、

身近な人や、初めて出会う人々のそれぞれの人生を深く感じていくのです。



それぞれが、人にはあえて言わないけれどこの人生で経験した

たくさんの深い出来事があることでしょう。

そのことが、ある時だれかが深い闇の中で迷っている時に、

航路を照らす灯台の灯りのように道を照らすことがあるのではないかと。

小説の中で、灯台を人のように描写するところがあります。



遠くの海を照らす灯台の灯りを思い浮かべてみてください。


最後に、妻の蘭子が亡くなるまで言わなかった秘密が解かれる場所が

島根県出雲にある日御碕(ひのみさき)灯台です。


日本一高い灯台らしい。行ってみたくなりますよね。
















こちらは京都駅前の京都タワー。


京都の街を照らす灯台のイメージで作られたそうです。

海ではないけれど。


「人生には、口をつぐんで耐え続ける日々があり、

 ささやかな幸福の積み重ねがあり、

 慈愛があり、闘魂がある。」



暗闇を照らす灯台の灯り




2020/09/18

みる

 



またもや本のお話。


門田隆将 氏  「疫病2020」


6月に出版された、新型コロナウィルス感染症に関するノンフィクション。


新聞にも、テレビのニュースでも報道されない事実が満載。

こんなに濃い情報をこの最中、短期間で収集して、書籍にするという、

すごい離れ業だと思います。


ウィルスが中国で広がり始めてからの世界の、日本の、政治の対応などを軸として、

このウィルスによって暴かれた様々なことが書かれています。



この本が書かれている時には、首相が交代する事実は分かっていなかった。

それでもこんなことが書かれている。


4月20日(月) (門田氏のツィート)

「コロナは早くも二人の ”総理候補”を潰した。「過剰な心配は要らない」と

 安心論を説き続けて1月史上最高の92万人の中国人を訪日させ、日本に

 潜在感染者を蔓延させた加藤厚労相、財務省の意向通り動いて国民の

 支持と面子を両方失った岸田政調会長。つくづく政治は生き物だと思う。」


岸田政調会長がなぜ面子を失ったかの詳細も、他の事柄も、

このように実名で色々なことが書かれています。


勿論、書かれていること全てを鵜呑みにして批判するのではなく、

私自身も自分で考えていきます。


「政治家の使命で最大のものは、”国民の命を守ること”だ。

 そしてそのための”生活を守ること”である。」


菅義偉首相は、「国民のために”働く内閣”を目指す」

と言っています。


しっかり目を開いて、見ていかなければなりませぬ。




2020/09/17

たび

 




20年近く前に初めて読んでから、何度か読み返している

沢木耕太郎さんの「深夜特急」


著者が26歳の時、仕事を辞め、インドのデリーからイギリスのロンドンまで、

乗り合いバスで行ってみたいと思い立って旅を始めて、途中の香港や

マカオで思わぬ長居をしてしまったりと、一年以上に渡る旅の詳細を

描いた紀行小説です。


久しぶりにまた読みたくなって、旅をしている。


いまだに旅のバイブルとして読まれ続けていて、

累計で500万部突破したらしい。


この本を読んだ後、28歳の時に仕事を辞めて住み慣れた場所からも離れて

京都の陶芸の学校へ行った。


なんだか私にとってはそれが一つの「旅」で、今でもその旅は続いている

ような気がする。


今読んでも全く色褪せていない。


沢木さんが旅をした時から50年近く経っているにも関わらず。


その時より、今は便利になったというけれど、本当にそうかな?

何処へ行っても携帯電話ですぐに検索できて、誰とでもすぐにつながって、

移動する手段もどんどん速度を増して。


「旅」のことを今だからこそ想い巡らせたりします。





2020/07/15

ひこばえ



「ひこばえ」ということば、聞いたことがありますか?


重松清氏の著作「ひこばえ」を読んで初めて知りました。


「樹木の切り株や根元から生えてくる若芽のこと

 太い幹に対して孫(ひこ)に見立てて孫生え(ひこばえ)という」



小説は、両親が離婚した時から、48年間音信不通になった父と、

遺骨と言う形で再会するところから始まります。

主人公は55歳の男性で、妻と、二人の子供がいる。

主人公は父との想い出がほとんど記憶の中に無く、顔も、声も思い出すことは

できないけれど、少し変わった「バイバイ」の手の振り方がおぼろげに浮かぶ。


主人公の姉や母、母が再婚した時の義父やその連れ子たちとの

距離や、自分の家族との関係、そして亡くなった父に関わっていた人たちとの

出会いがあって、父の姿を追っていく、というお話です。



主人公の孫が生まれることで、また命が繋がっていき、

遺骨となった父も、確実に孫の命の中にあるということを感じていくのです。



色々な登場人物がいて、その中には結婚しなかったり、子供を持っていなかったり、

これから、という人もいます。

子どもを産んで、孫が生まれて、という「ひこばえ」だけでなく、

色々な形の「ひこばえ」があるんだということも伝えています。



私も誰かに「ひこばえ」を渡せるといいなぁと思いました。






2020/06/01

けんじ




宮沢賢治。

「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」「風の又三郎」  などなど・・・

国語の教科書に載っていたり、題名だけでも聞いたことがある人も多いでしょう。



「銀河鉄道の父」という門井慶喜氏の小説を読みました。


賢治の父、政次郎の目線を軸として宮沢賢治の生涯を表しています。


父は、どこまでいっても父でした。


有名な「雨ニモマケズ」全文が小説の最後に載っているのですが、

賢治の生涯を追いつつ読むと、また違った思いが湧いてきました。





雨ニモマケズ

風ニモマケズ

雪ニモ夏ノ暑サニモマケズ

丈夫ナカラダヲモチ

慾ハナク

決シテ瞋ラズ

イツモシヅカニワラッテヰル

一日ニ玄米四合ト

味噌ト少シノ野菜ヲタベ

アラユルコトヲ

ジブンヲカンジョウニ入レズニ

ヨクミキキシワカリ

ソシテワスレズ

野原ノ松ノ林ノ蔭ノ

小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ

東ニ病気ノコドモアレバ

行ッテ看病シテヤリ

西ニツカレタ母アレバ

行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ

南ニ死ニサウナ人アレバ

行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ

北ニケンクヮヤソショウガアレバ

ツマラナイカラヤメロトイヒ

ヒデリノトキハナミダヲナガシ

サムサノナツハオロオロアルキ

ミンナニデクノボートヨバレ

ホメラレモセズ

クニモサレズ

サウイフモノニ

ワタシハナリタイ





結核で死の淵にいて、手帳に書き留めたこの言葉は、

立派な人になれよという言葉でもなく、慎ましく生きろということでもなく、

ただ、賢治がさういふもののやうに生きたかったのだと。

死に近いところにいてもなお、明るく、悲壮感はなかったのだと。






しかし、米好きの私でも「一日に玄米四合」は多いな~。

けれど、他に魚や肉のような主菜があるわけでもなく、

野菜も少しなんだもんなぁ。




「伝記」という堅苦しさはなく、実際に生きた人の血肉を感じるような小説で、

とても面白かったです。







2020/05/05

こるこる








































原田マハ 作  「風のマジム」


この物語を読んだら、久しぶりに「コルコル」を呑みたくなり、

近所の酒屋さんに置いてあるので自粛せず買いに走りました。



「風のマジム」は実話をもとに作られていて、南大東島で沖縄産の

サトウキビを使ってラム酒を作ろうと立ち上がった女性のお話。



以前にコルコルが作られるまでのお話はチラっと聞いていたけれど、

この小説を読んでもっと身近に、そして愛おしく感じられました。




北大東島に期間限定で友人が滞在しているので、訪ねたいと思っていた

矢先だったので、更に更に想いは募るもの。





小説の中で、「ラム酒は沖縄料理に合う」という記述があり、

しかも「豆腐よう」に合うとあったので、ちょうどいただきものの

豆腐ようがあったので(なんという偶然!?)試してみたところ、


まーさんやー 見事やっさー 上等上等























なんだか赤い画面。

琉球ガラスで炭酸割り、紅麹の豆腐ようを、友人作赤絵の器に。





「コルコル」という名前は

「CORAL」  コーラル:珊瑚

「CORONA」 コロナ:冠


珊瑚の冠という言葉から成るそうです。




名前と言うのは大切なものです。

言霊というものがありますので、言葉にする時は、負の感情ではなく、

美しいエネルギーと共に発したいですね。





しかし、美味しくて呑み過ぎ注意!




2019/08/26

りーち


































河井寛次郎 作






「リーチ先生」 原田マハ 著


イギリス人陶芸家、バーナード・リーチ(1887年~1979年)を

題材にした、史実に基づいて書かれた小説の紹介です。



実在の人物、陶芸家の濱田庄司や河井寛次郎、富本憲吉、

民芸運動の柳宗悦、白樺派の志賀直哉や岸田劉生との交流を、

架空の陶芸家親子を通して語る手法で物語は進んでいきます。



民芸運動のことから、バーナード・リーチのことは知っていたけれど、

この小説によって、はるばるイギリスから日本へやってきて、

どうやって陶芸へ辿り着いたかということがわかりました。



西と東の文化を結び、日本とイギリスの架け橋になろうとして、

本当にそのように生きたリーチ先生の姿に感動しました。



日本語もわからない状況で、高村光太郎の紹介のみで東京へやってきて、

たくさんの良き出会いを得て陶芸家になっていくのです。



イギリスに帰り、セント・アイヴスに、濱田庄司とともに

日本式の登り窯を作り、「リーチ・ポタリー」という

工房を開いてよき器を作ろうと土と向き合い続けた人生。



今でも「リーチ・ポタリー」はセント・アイヴスに残っているそうです。




虚実ないまぜになっているのですが、陶芸に向き合う情熱や、

仲間との温かい交流が胸に迫ってきました。



初めて土に触った時や、陶芸の道を目指すと決めた頃のこと、

陶芸の学校へ通っていた時のことなどが心に浮かんできました。




いつもよい本を紹介してくれる方に、感謝です!








2019/03/15

たからじま









































第160回直木賞を受賞した真藤順丈氏の「宝島」

1952年から1972年の、アメリカの統治下に置かれた沖縄で、

米軍施設の物資を奪って生活の糧としていた「戦果アギヤー」(戦果をあげる者)の

若者たちを中心とした、史実を交えつつの物語。



作者は東京出身の人で、沖縄の人間ではない自分が書くということの

葛藤を繰り返し、7年の歳月をかけて書き上げました。

沖縄の問題というのは現代日本のいちばん複雑な問題で、その腫れ物に

触るような扱いをするというのが潜在的な差別感情のようなことが起きている

のではないかと、作者は言っています。


辺野古への基地移設の件も、対岸の火事ではないのです。


真藤さんが伝えたいことは、この世の問題に対して「逃げないで」

ということだと思います。


何ができるかと考えて、できることで行動して、伝えるということを

あきらめないで、ということです。



「しかたがない」とあきらめないで考えることです。



~安倍政権と「本土」の人々が一緒になって沖縄を差別し、犠牲にしているのが

沖縄の「本土復帰」から47年になろうとしている現在の日本だ。~



「宝島」を紹介する文章の中にあった一部です。



沖縄も、福島も、岩手も宮城も北海道も九州も、日本のすみずみまで、

政治の犠牲になってはいけないと思います。




「さあ、起きらんね。そろそろほんとうに生きるときがきた」




2018/12/16

ののはる






冬真っ盛りだけど、「野の春」宮本輝  著 を読んだので、

私の頭の中は桜が満開。

写真は以前、山で見た桜です。



「流転の海」から始まった、宮本輝さんの父親をモデルとした

自伝的小説が、37年の歳月を経て完結しました。


「流転の海」
「地の星」
「血脈の火」
「天の夜曲」
「花の回廊」
「慈雨の音」
「満月の道」
「長流の畔」
「野の春」

全9部です。



それにしても37年!

途中、別の小説をたくさん書いていらっしゃるけれど、この9部の中に

それらの小説の源があるのだとわかります。

一つのことを、30年以上続ける。本当にすごいことです。


読者の中には、最後まで読むことが叶わず他界された方もいるかもしれないし、

何より、宮本輝さんが生きて、完結できたことを喜んでいるでしょう。


この本を与えてくれた生徒さんと友人に感謝します。

すごい小説ですよ! 長いけど!



主人公の熊吾の言葉

「なにがどうなろうと たいしたことはありゃぁせん」



生徒さんは、また最初から読み返し始めたらしい。

私も、また熊吾に会いに行こうかな。







2018/08/06

えらぶ





73年前の今日、広島に原爆が落とされました。

安倍首相は、広島市で開かれた平和祈念式典で挨拶されたそうですが、

「核兵器禁止条約」のことには触れなかったとのこと。

日本はこの条約に、核兵器保有国と共に参加していません。

政治上の問題や、核保有国と非保有国との溝が一層深まる懸念がある、

などそれらしい理由をつけていますが、どうなんでしょう。





最近は沖縄に関する書籍を色々と、図書館で借りて読んでいたのですが、

先日、いつも私にたくさんの気付きをもたらす本を贈ってくれる人が、

また新しい本を贈ってくださいました。良い本をありがとうございます。





「神に守られた島」   中脇初枝 著


第二次世界大戦末期の沖永良部島を舞台にしたお話です。

島に生きるマチジョーと言う少年の目を通して、戦争のこと、

家族のこと、集落の人々との交流が語られています。


題名の「神」とは、特攻でアメリカの軍艦に突撃して命を落とした

兵隊さんのことで、戦時中、その人たちは「軍神」と

呼ばれていたことから、沖永良部島の上空を沖縄へ目掛けて

飛んで行く特攻機を見てマチジョーが「この島は守られている」と

思っていることを表しています。



後半、マチジョーはその人たちが「神」ではなかったと気が付くの

ですが、読んでいてたくさんの箇所で涙そうそうとなりました。



絶対に、もう二度と戦争はしてはならない!!

世界中でいまだに続いている戦争がなくなりますように。



えらでぃえらばらぬえらぶ島(選んでも選べない永良部島)




一人一人が選んでいくことが大事。

しっかり目を開いて、耳をそばだてて、考えなくてはならないです。